上司にとって、部下育成で頭を悩ませるのが「叱り方」です。

「叱らずに、勝手に部下が伸びてくれたら良いのに…」

残念ながら、そうならないのが現実です。

何が「叱る」ことを難しくさせているのか?

1:社会背景がちがう

●物が無い時代
マイホーム、マイカーがステイタスでした。
所有できることが憧れでした。

●バブルの時代
ブランド品を身につけることで自分の値打ちが上がった気分になれました。
つまり「虎の意を狩る」でした。

●ゆとり世代
個性の尊重と自由を教育されました。
そのために「個性が自覚できない」「将来の目標がないことが劣等感」と感じる若者が増えました。

●ミレニアム世代、Z世代
自分の物欲よりも「社会を良くしたい」自然環境、社会課題の解決に関心が高まりました。
地球規模でのビジネスモデルなどは、社会起業家と言われたりしています。

2:「背中を見て学べ」より「動画や音声など五感で学ぶ」

ミレニアム世代・Z世代は、生まれた時からインターネットが存在していました。

今の時代は、教え方は口伝だけではありません。
動画や音声など、テキスト以外で情報収集できる時代です。

最も効率の良い最善策で教えるほうが、今のビジネス環境とも相性が良いはずです。

3:叱られたことが無いのに、部下をどう叱れば良いのか?

30歳代の若手リーダーは、自分自身が叱られた経験がない場合があります。

「部下をどう叱って良いかわからない…」

自信が持てず、戸惑っているケースがあります。
組織としては上司の部下育成スキルに濃淡があってはいけません。

なぜなら、部下の育成にバラつきが出ることを放置するのは組織として損失だからです。

若手リーダーの部下育成スキルを向上させることで、若手リーダーを伸ばし、その下の部下も育成することが、組織全体のパフォーマンスを上げることにつながるのです。

部下を叱るときに心がけるポイントまとめ12選

1. 怒るエネルギーを無駄づかいしない

2. 「どういうこと?」で終わらない

3.「なぜ?」で迷走させない

4. ダメ出しで終わらない

5. 人格否定しない

6. 尊敬している人を非難・批判しない

7. 論点をずらさない

8. 否定語で終わらない

9. 上司の言葉で終わらない

10. 性善説と性悪説を使い分ける

11.いきなり叱ってはいけない

12.目的を見失わない

1. 怒るエネルギーを無駄遣いしない

一般的には、怒ってはいけないと言われています。

怒りの感情を抑えることができるならば、大いに実行しましょう。
しかし、多くの人にとっては、怒り感情を抑えることがとても困難です。

意外かもしれませんが、怒り感情を消す努力よりも、怒りエネルギーの有効活用するほうが健全です。

怒り感情は消すより、怒りエネルギーを有効活用する

そもそも、部下を怒りたいなる理由は、部下を信頼し、成果を期待したから依頼したはず。
それが、期待と異なるアウトプットだったために、上司は予想を裏切られたため、腹が立ったのです。

怒りが暴発する前の感情は、予想を裏切られた驚きだったのです。

怒り感情の源は、予想の裏切り

原点回帰すると、そもそも部下に仕事を任せた理由は「信頼・期待」です

部下への思いのエネルギー「信頼・期待」は部下育成には必須のマインドです。

この原点を忘れずに部下育成すれば、「叱る」とパワハラは明確に違うと部下に伝わるのです。

怒りのエネルギー発動の原点は、部下への信頼と期待

【怒りを止めると、あなたがパワーダウンする】

怒りのエネルギーを止めるデメリットについて、詳しくはこちらのコラムに書いています。

2.「どういうこと?」で終わらない

上司が、部下へ

「どういうこと?」と質問したとき、トンチンカンな答えが返ってきたことはありませんか?

それは、上司の質問の意図が部下に伝わっていないからです。

✅上司の「どういうこと?」の質問の意図は3つある

①説明が足りない

②要点だけをまとめて言ってほしい

③わかる言葉に言い換えてほしい

①説明が足りない

いくら説明が長くても、上司が欲しい情報ではない場合があります。

例えば、社内にコーヒーマシンを設置してもらいたいとき

「最近業績も順調なので、コーヒーマシンを設置するのも良いと思います。
自販機もありますが、ジュースよりコーヒーの方が需要も高いですし。

コーヒーマシンがあると、煎れる間に自然と会話も生まれるでしょうから、コミュニケーションも図れると思われます。

設置に関して調べましたところ、場所も省スペースでちょうど自販機の横のテーブルのスペースに置けます」

しかし、上司にしたら「だから何?」という感じで、決定的理由にはなりません。

それよりも

「社内にコーヒーマシンが無いと、外に買いに行く必要があります。

すると、近所へ買いに行く必要があります。場合によっては社員同士が歩きながら仕事の話をすることで機密情報が漏れる危険が考えられます。
セキュリティの面からもカフェマシンの導入は必要です。

説明が足りないというのは、説明を長くすれば良いということではありません。
相手が求めている情報を伝えることが大切です。

②要点だけをまとめて言ってほしい

「この企画書、ずいぶん厚いけど、どんな企画か言ってくれる?」

上司がこのように言った場合は、「つまり、ポイントは何?」と要点を絞って伝えてほしいというリクエストです。

③わかる言葉に言い換えてほしい

コミュニケーション、スキル、バリアフリー…は、ある程度は一般化したカタカナ言葉です。

では、以下はいかがでしょうか?

アセスメント
プライオリティ
アジェンダ
サマリー
アンコンシャスバイアス

聞き慣れないカタカナ言葉は、知らないと言いにくい雰囲気を感じます。
また、なんだか煙に巻かれたような不信感も感じます。

ただ「それってどういう意味?」と直球で質問しづらいものです。

なので、相手が???という表情であるかどうかを観察して、わかりやすい言葉に言い換えることが大切です。

言葉を知っているかどうか?のマウント取りは不毛。
相手とコミュニケーションをとることで、伝えることが重要です。

3.「なぜ?」で迷走させない

トヨタ自動車では「なぜ?」を5回繰り返して、原因を突き止めて、真因を探る。

これは有名な話です。

実は「なぜ、こうなったのか?」の質問は、何が問われているのか部下は理解していないことが多いです。

その証拠に、上司は「そんなこと聞いているじゃないんだよ!」と言っていませんか?

その原因は、上司の質問が漠然としているからです。

「何がそうさせたのか?」

・ルールに落ち度はなかったのか?
・手順に誤解させることはなかったのか?
・誤操作させる誘導がなかったか?
・環境に危険は潜んでいなかったのか?
・仕組みに、欠落欠陥はなかったのか?

「なぜ、そうなったのか?」←人を責めるニュアンスも含ませている

「何が、そうさせたのか?」←仕組みの改善、強化に焦点を当てる

4. ダメ出しで終わらない

「何やってるんだ!」「ダメじゃないか!」は言いがちです。

しかし、ダメ出しだけでは、単に注意指摘しているだけで、指導していません。

上司の仕事は、部下を指導育成することです。

ダメ出しで終わらずに、あるべき行動を言葉で伝えることが上司の仕事です。

ダメ出しで終わらない
あるべき行動を言葉で伝える

5.人格否定しない

遅刻が多い部下をお説教しているうちに、話がずれて「いい加減な性格だからダメなんだ」と言う上司がいます。

遅刻と性格に、因果関係の証明はできません。

上司はセラピストやカウンセラーではありません。
よって、上司が部下の性格改善するのは、越権行為です。

上司の仕事は、部下が成果を上げるように、行動を改善させることです。
部下の人格を改善させることは専門外ですし、パワハラと言われかねないのでやめましょう。

上司自らが、危険領域に足を踏み入れてしまう必要は無いことがわかるはずです。
組織に期待されているのは、部下に成果を出してもらうことです。

上司も専門領域で力を発揮しましょう。

6. 尊敬している人を非難・批判しない

部下が失敗やミスを連発すると、上司もほとほと困ってしまうことがあるかもしれません。

「親の顔が見てみたいものだ」

しかし、部下本人にとっては

(自分が否定されるのは自業自得だけれど、尊敬する人を悪く言われるのは許せない)

と感じるものです。

部下本人へ、行動を改善するようにアプローチを変えて指導をしましょう。

7. 論点をずらさない

話が長くなると、何について話しているのか分からなくなることがあります。

話す上司がわからないと、聞いている部下はもっと分かりません。

話が枝葉末節に迷い込んだ時は、一言で言い切ることです。

「つまり、◯◯してください」

上司は部下へ、明確に、行動指示を出すことです。

8.否定語で終わらない

「◯◯してはいけない」と言うと「じゃあ、何したら良いの?」と各々が勝手に考え始めて動きます。

クリエイティブな仕事では良いかもしれません。

しかし、命が関わる現場や安全第一が求められる職場においては、明確な行動基準を定める必要があります。

否定後「◯◯してはいけない」
ではなく
肯定語「◯◯すること」

肯定語で言い切ることで、あるべき行動指針が全員で共有できます。

9.上司の言葉で終わらない

上司が叱るとき、たいていは上司の言葉で終わります。

「いいか、わかったな?」

残念なお話ですが、部下は上司が思っているほど「わかって」いません。

話す立場が能動的で、聞く立場は受動的です。

つまり、叱る上司が能動的態度であり、叱られる部下が受動的態度なのです。

この関係を逆転させる必要があります。

部下を主役にして、能動的態度にさせなければいけないのです。

そのために、上司が叱った時は、必ず部下に発言させることです。

「私が話したことで、やるべきことは何と考えましたか?」
「今、私が言ったことをヒントにして、いますぐ何をしますか?」
「今、私が言ったことをヒントにして、どんな行動プランを思いつきましたか?」

実行することを前提に質問することがポイントです。

10.性善説と性悪説を使い分ける

部下が「分かりました!」と言うと、上司は嬉しいものです。
しかし、その後「あれ?指示したことと違うぞ」という状況はよくあります。

部下の「分かりました!」を信じてはいけません。

上司が部下へ問いかけるのは

「分かりましたか?」ではなく「できますか?」と聞くことです。

✅上司が部下を判断する視点

信じるな。疑うな。確認せよ

11.いきなり叱ってはいけない

危険を感じると、動物の行動パターンは3つに分かれます。

✅危険を感じた時の行動パターン

①闘う
②逃げる
③立ちすくむ

人間にとって危険と感じることは、怒られた時です。

さて、上司は愛情で叱っているつもりでも、もしかしたら部下は「怒られた」と感じるかもしれません。

すると、部下が上司へ示す態度は、以下です。

①闘う    ←「パワハラだ!」と訴える

②逃げる   ← 転職する。休職する

③立ちすくむ ←思考停止になる

そうならないために「叱る」コツがあります。

それは、部下にメンタルリハーサルさせることです。

叱ることを事前告知するのです。

✅叱るときの3つのステップ

ステップ1:許可をとる

ステップ2:簡潔に伝える

ステップ3:発現させる

ステップ1:許可をとる

上司は部下へ「厳しいことを言っていいですか?」と確認します。

この確認をせずに上司がいきなり怒り出すと、部下は(説教が始まった…)と感じます。
この確認をする目的は、「言質をとる」ことで、部下に選択責任が生じるのです。

ステップ2:簡潔に伝える

改善してもらいたいことを簡潔に伝えます。

何について叱っているのか?明確に注意指摘して、そして改善行動を伝えます。

ステップ3:発言させる

上司がステップ2で伝えたことを、部下に発言させます。
上司が叱っているとき、部下は利き手ですから、受け身です。

受け身→主体へ、部下の意識を変えるために、部下にやるべき行動について発現させるのです。

こうすることで、上司も部下の理解度を確認することができます。

12.目的を見失わない

ラストです。

そもそも、何のために叱るのか?

それは、部下に成果を出してもらうためです。

上司がマウントを取るためではありません。

部下が自分の不足点に気づき、ゴールに到達することを支援する。

これが、上司の仕事です。

部下育成は、部下が主役です。

部下が未だ見たことのない能力をも発揮させるきっかけと刺激を。
部下のブレイクスルーのために、叱るを活用するのです。

叱るは手段。目的ではない

叱ることは、部下育成の手段の1つです。
叱ることが、目的化すると、本末転倒です。

成果を上げるために、組織から預かっている大切な部下の能力発揮を支援する。
それが、上司の役割です。

叱ることで、部下の能力を引き出して成果を上げていきましょう。

叱りの達人 パワハラ対策専門家 河村 晴美

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